政治論

 現代社会において、残念ながら政治に明るいイメージや希望を抱く人は少ないのではないだろうか?多くの政党の理念は違いが分かりにくく、また実質的にはあまり意味を持っていない。長期的にどのような国家、国政を構築していくかというような議論はほとんどなされていない。国会決議を国会議員の数に応じて行うのは一応当然ではあるが、この際に国民の多数意見に沿って決議を行おうとする姿勢はあまり認められない。時に政治は国民よりも企業や業界を優先していると思われる政策を行なってきた。不毛な与野党間の非難合戦や政治家や官僚のモラルの低下、国内政治の状況を眺めただけでも、悲観的気分に陥らざるを得ない。
 政治は今まで経済政策を中心として進められてきたが、人は経済状態が整っても必ずしも幸せになる訳ではない。国民主権の観点から考えれば、政治の奉仕対象は国民であり、国民が幸せに暮らせる条件を整えることがその役割である。従って、新しい政治理念では、人々の幸福感や生き甲斐を重視するものであることが望ましい。尚、社会としては当然ながら、他人を犠牲にするような幸福の追求方法は容認できない。このことにも関連するが、幸福感や生き甲斐は心の問題でもあるため、新たな政治理念はむしろ心や心のあり方を重視するものとして考察していきたい。
 新しい政治理念は日本だけでなく、国際的にも受け入れられるものであることが望ましく、国際的な問題の解決に貢献できるものでありたい。このためは、民族、宗教、文化などに依存せず受け入れられるものである必要がある。国内的に考えれば、職業や経済状態、思想などの対立的要素を超えたものとして、より多くの人に受け入れられるようにすることが望ましい。新しい政治理念はこれらの要請に加えて、時代の変化にも耐えうる普遍的なものであることが望ましい。心や心のあり方を重視する政治は、これらの普遍性の要請と矛盾せずむしろ整合性があるのではないかと思う。
 現在の政治の混迷と政治不信は、納得できる政治理念が見出せないために生じている状態であり、理想の政治のイメージを人々に湧き起こさせるような新たな政治理念を構築することができれば、不毛な対立やモラルの低下も改善に向かうのではないかと希望的に思いたい。